ちょス飯の読書日記

 『水死』 ★★☆☆☆
    

水死 (100周年書き下ろし)

水死 (100周年書き下ろし)

 私小説というものなのか、故郷に帰った筆者の家族の日常と戦後に水死した父上の事情が謎解きのように描かれている。
 父が読み間違えた文字。それを主人公が指摘。水が、森のように三つある漢字があるとは。知らなかった。
 
 戦争と国家。国家と反逆する個人。一揆とメイスケ母強姦。芝居と観客。死んだ犬を投げるとは。ウナイコという勇敢な女優は、誰がモデルなのかな。
 あまり面白くない。

 荒野へ道化を連れて行く「リア王」と夏目漱石の『こころ』が中に出でくるので、この二つを読んでみることにした。
   
  『リア王』 ★★★☆☆
   

リア王 (ワイド版岩波文庫)

リア王 (ワイド版岩波文庫)

 セリフだけの本を読むのは、難儀だった。登場人物の名前もなかなか覚えられないし。けれど、脚注が興味深くだんだん面白くなってきた。
 いろいろな諺や名言があった。
 家族の愛憎、老いるという事の哀しみ、目を抉りとられた公爵が見えなくなって「見える」ようになったというセリフが印象に残った。人は、見ていても「見えていない」ものだ。
 1605年にイギリスで書かれたものが今も上演されたり、翻訳し直されて出版されたり、日本の中年女性に読まれている。時空を超えて読み継がれていることに驚く。

 卑猥な表現を、あからさまにせず言わせている。上演されたとき紳士淑女の観客はくすりと笑っただろうか。
 シェイクスピアという人は、かなり皮肉屋で猥談が好きだったのかな。「道化」は常に真理を語るシェイクスピア自身なのか。