ちょス飯の読書日記
『おえん遊行』 ★★★★☆
- 作者: 石牟礼道子
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1984/06
- メディア: 単行本
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おえんは、襤褸をまとう気狂いの女乞食である。
物語の時代はキリシタン禁制のころ、場所は天草近くの小さな島。
アコウの樹の下に住み着いた流れ人のおえんが、踏み絵をさせるためにやってくるお役人に、恐れ知らずに振る舞う。大嵐や干ばつで島の年寄りが死んでしまうが、どんなに年寄りの知恵が暮らしを助けることかと美しい文章で描かれている。
アコウの樹を焼いて、雨乞いする場面は痛々しかったが島人が総出で、神に祈るという原始宗教の姿が、胸に迫った。
それにしても、「馬後家」という言葉を初めて知った。人を貶(おとし)める最大の侮辱。まして、最愛の母親を、馬の後家だと言われたら、誰でも逆上するだろう。ワールドカップの決勝戦でのジダン選手の頭突きを思い出した。
このような、悪者(主人の側)がいつの世にもいて、美しい心の若者(奉公人)が無残に刑死させられることは、本当にあったのだろう。
いつのまにか、おえんは磔刑で斬首された奉公人や、その首を抱えた母親の声を聴けるようになり、役人にそのまま聴かせ始める。島人も庄屋も、おえんの歌をいっしょに歌うようになり・・・。
最後は、悲しすぎるので、マイナス1★とした。
『アニマの鳥』のモチーフのような作品。