ちょス飯の読書日記
『常世の樹』 ★★★★★
- 作者: 石牟礼道子
- 出版社/メーカー: 葦書房
- 発売日: 1982/10
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とくに、日本最大級の楠、これを見てみたくなった。
石牟礼氏は足腰も弱り、眼もはっきり見えなくなっている状態だったが、耳や鼻。手触りで自然を感じ取っている。地図や写真も掲載しているが、白黒写真で部分しか写っていない。確かに巨木過ぎて全体像は捉えられないのかもしれないが、わかりにくいのが難点だ。
「天の傘」の章ではフンシ―ガジュマルが、恩納獄の麓にありその山腹は、米軍の実弾訓練でえぐり取られ続けているとあり、胸が痛んだ。
以下に、印象の深い箇所を抜粋しておこう
164,165頁
人々が祖霊たちに抱かれて安堵できる森をそこここに置く山々に、今も砲弾が撃ち込まれる。深傷を負いながら恩納獄は耐えていた。村民たちと共に守護神のガジュマルもまた。
小さな固有の神々にとって国家とは何であろうか。死んだ水俣の人びとの遺した言葉も「国は、日本の国は、どこにゆけばあるか」というものであった。たぶん政治の概念でとらえるそれではあるまい。
中略
地と潮の間に、天からきた傘のように立つ樹がわたしに促す。闇の中から来たものは、書かれていない詩を読み解けと。ひびきになる前の音楽のような陽の光がくる。悲しみと怒りが、光の世界を彫琢していることは、なんという不思議さだ。