ちょス飯の読書日記

 『くちぬい』  ★★★★☆

くちぬい

くちぬい

 再読。2011年3月11日を経て半年で、坂東が書き上げた。放射線汚染を恐れて東京から高知の山間部に転居してきた夫婦が、小洒落た家を建てて悠々自適の老後生活を始める。
 しかし、陶芸が趣味の夫が窯を「赤線」の上に建てたことから村人から嫌がらせを受けるようになる。
 山の中限界集落では、皆が仲良く助け合って暮らしているかと言うと・・・。大きい家を建てたり幸せそうにしていると、それがいじめの対象になる。結果的には殺人さえ起きる。しかし、村人は一切口をつぐみ犯罪としては立証されない。
 死にかけの村人たちの悪意は十分描かれていたが、結末は、ちょっと飛躍しすぎで激しすぎる。もう少し原発事故により、ある主婦の心身が侵されていくという物語にしたほうが良かった。