ちょス飯の読書日記

 『王とサーカス』  ★★★★☆
 

王とサーカス

王とサーカス

 2001年ネパールで起きた王族射殺事件の日に、カトマンズにに来ていて、丁度居合わせたフリーになったばかりの女性記者太刀洗 万智(たちあらい まち)がヒロインだ。
 冷静沈着・無表情で、しかも日本で心に深い傷を負ったばかりの彼女が、この大事件の記事を書くことになり、その取材を通して、ジャーナリズムの真髄とは何かを描いた。

 リアルで、静かなミステリー社会は小説だ。

 「ハゲワシと少女」の章はわたくし自身が読む前から思っていたことが、米沢氏のコメントとしてしっかり書かれていた。

 世界に伝える前に、目の前の飢えている少女を何故助けなかったのか。ピューリッツア賞を受賞した、このカメラマンは後に自殺してしまった。

 事実を伝えるとはどういうことか。受けてはどう、それをとらえるか。

 たいていの読者は、サーカスで猛獣が逃げ出したニュースを喜ぶ。

 そして、ネパールの貧困問題が報じられて、WHOの援助により乳児の死亡率が減少したことが、こどもを大量に生きながらえさせることになり、「職の無い」こども達をより貧困ににさせた・・・という、カトマンズで働くこどもサガルの言葉に、衝撃を受けるヒロイン。
 
 報道にはそういう一面もある。何故、ある国のことを世界中が知らなければならないのか、そんな必要はあるのか。

 ヒロインは最後に、その答えを見つける。

 あなたにも、読んでいただきたい。

 マイナス1星なのは、もう少しヒロインにどじな一面や葛藤するところ、ほっとできる場面、華がほしかったから。