ちょス飯の映画評
『山の音』 ★★★★★
- 出版社/メーカー: 東宝
- 発売日: 2005/08/26
- メディア: DVD
- 購入: 1人 クリック: 118回
- この商品を含むブログ (38件) を見る
舅と嫁の愛情が、肉体関係を持たないものであっても、互いの連れ合いを傷つけてしまう。なんとも、複雑な日本人特有の心理描写だ。(とはいえ、他国の舅と嫁の関係を知らないが)
「お父さま!」と舅役の山村聰が帰宅するところへ、はつらつと自転車に乗って買い物から帰ってくる嫁役、原節子の美しいこと!
息子は、上原謙。美男美女の夫婦だが、・・・。息子はできすぎた嫁が気に食わないのか、甘えているのか浮気をしている。
姑は長岡輝子。くどくどぐちぐちやかましいセリフがリアルで、ユーモアを感じた。ピンと張り詰めた物語のなかで、現実を彼女が体現している。
夫と仲違いして出戻ってきた、小姑のつっけんどんな嫁いびり、いじわるさも素敵だった。
耐えることだけをして、甲斐甲斐しく家事をこなしていると見えた、嫁が実は・・・。はっきりものを言わない分を行動で示し、夫に大打撃を与えるのだった。
このどんでん返しに驚いた。浮気相手の、確固たる信念にも。新しい女性像を成瀬監督は描きたかったのではないだろうか。しかし、物分りの良すぎるお舅には、違和感があった。これほどできた人は、なかなかいない。
戦後わずか9年でこれほどの映画を、撮っていたのかと驚かされた。
川端康成の原作を読んでみたい。