ちょす飯の映画評
『赤線地帯』
- 出版社/メーカー: 大映
- 発売日: 1995/10/13
- メディア: VHS
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映画はきれいごとにすぎる感も否めない。何せ、娼婦役に若尾文子、京マチ子、木暮実千代、と。大変な美人女優が演じているからケチな女将に沢村貞子。本当にリアルで小憎たらしい役がうまい。
題名に鼻の下を伸ばすものには期待ハズレで、濡れ場はなく、健全だ。
それにしても、監督が女性を尊敬していると思った。
最低の女と蔑まれる人々に対する、深い愛情を感じずにはいられなかった。様々な苦境を打開しようと自ら娼婦となった女たちが、それぞれに力強く描かれている。そして、彼女らは助け合い、励まし合っているのだ。
処女の娘を売り飛ばす両親もいるが、肺病の亭主と赤子を食わせるために、息子を育てるために、父親の借金を返すためにと女たちは、客を引く。
しかし彼女らは、決して暗くはないのだ。誇りを持って働いているともいえる。哀れだったのは、田舎に住む義理の両親と息子のために働いてきた母親に、工員として東京に就職した息子から「汚らしい、恥ずかしい、あんたとは縁を切る」と言われた女。彼女は、発狂してしまうのだった。
小津監督とは違う、汚れた暮らしをしている人たちの哀感と喜び、意地を描くことを溝口監督は得意としていたのだろうか。彼の作品を初めて見たがもっと見てみたい。