愛のあるところに奇蹟は生まれる

 アルバイト勤務が12時から18時のchosuは、休みの日は昼過ぎまで寝ている。今日は休みなので起きないと思っていたら、珍しく9時に起きた。
 chosuが、4歳のときに食べた夏みかんの種が、実の中で根が出ていたのでかわいそうに思い、植木鉢で育てていたのだが、この娘が26年間生き続けて、なんと毎年アゲハが育つ木となった。しかし、小人マンションで育てるのは、難しい。店で売っている一番大きな植木鉢で育てていたが、そのまま22年間も植替えをしてあげなかったので、弱ってきて昨夏はアゲハの母さんが一度も飛来しなかった。葉がくるくると丸まってしまったので。
 つまり、アゲハはこの木ではこどもが育たないと判断したのだろう。
 chosu-manma一家は悲しんだ。

 もう、先日ノコギリで切って捨てましょう。今までありがとう。とchosou-pampaと話し合っていたら、翌日小さな小さな葉の芽がちぴんと出ている。あちこちに。まるで人の声を聞いていたかのようだ。(昨年元気そうだった葉を残してあるので、大きいのは昨年のもの)

 ああ、まだお前は生きていてくれたのだね。ごめんごめん。
 
 新しい土に替えてあげよう。伸びすぎているだろう根を切ってあげよう。
chosu-pampaの休日を待って、植え替えをした。
 さすが、小さいのにウルトラマンとあだ名されたバカちからのchosu-pampa.
すぽんと植木鉢から夏みかんの木を引き抜いた。
しかし、それは前日chosuと一緒に土の上にもうもうと生えていた幹の周りのひげ根を5cmほど切り取っておいたから、うまく抜けたのだろう。

 そして、今日早起きしたchosuと、根の周りの土を落としてから根を切り詰め新しい土に入れ替えることができた。
 

 土の中にはダンゴムシや便所虫、ハサミムシ、アリの巣などがあった、ゴキブリもちゃっかりと鉢のしたに隠れ住み卵を守っていた。かわいそうだが、みんなは解散してもらった。皆、別の鉢底に隠れたようだが、アリは部屋に行列をなしてやって来た。まずい。このままでは他の部屋の人にも迷惑を掛けてしまう。
 そこで、ベランダに角砂糖を配置。なんとかこちらへ集まってくれると良いのだが。

 さて、奇蹟の話。
 
 なんとなんと小さな芽は日に日に大きくなってきていたが、植替えをして若葉を観察した所、小さな小さな丸い蕾が3個。
 彼女は花をつけない。10数年前に一度たった2輪咲いたことがあるだけだ。実は結ばなかった。常にアゲハの幼虫やクロアゲハの幼虫に、むしゃむしゃ食べられているから。食べられても、芽吹き、食べられても芽吹きを繰り返してきたのだ。その生命力にも、小人マンションの住人たちは驚き感激してきたものだ。丸坊主から復活してくれるので。しかし、アゲハの幼虫たちには、もう一本大きな夏みかん(柑橘系の木)が必要だ。今、もう一本育てているのが、こちらも種から育てた3年生。去年グレープフルーツの15年くらい生きた木は黒くなって枯れてしまった。今の妹木では、とてもアゲハが成虫になれる大きさはない。こちらは、保護しなければならない。

 死にそうになると植物は子孫を残そうとすると、『カムイ伝』で笹の花が咲く場面で読んだが・・・。
 「お前も、死の危機を察知して花をつけようとしているのだね!」

  愛のあるところに奇蹟は起きたのだ!
 毎年、ただ私達の都合で、アゲハに食べられるために葉を茂らせてもらっていた。耐えに耐えて生き続けてくれた夏みかんだったが、花も実もつけたかったに違いない。ごめん。アゲハの幼虫が君の体を喰い破っても、どうか花を咲かせておくれ、初めての実を実らせてご覧。

 もし、アゲハの母さんが今年も来ないなら、このまま発根できて花も咲くかもしれない。

 どうしよう。もしアゲハの母さんがやって来て産卵したら、卵を打ち捨てるべか。

 いや、自然に任せよう。頑張れ、夏みかん、頑張れ。そして、生まれて初めての懐妊をしてほしい。夏みかんには、「パル子」と名付けることにした。