ちょス飯の読書日記
『怒り』上・下 ★★★★☆
- 作者: 吉田修一
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2016/01/21
- メディア: 文庫
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これは、理由なき殺人の犯人を見つける物語。しかし、犯人の名前や身体的特徴、顔も割れている。全国手配が出されていても、見つけられない犯人を追う、刑事と自分の身近に暮らす男が、もしかしたら犯人かもしれない・・・という怖い怖い展開だ。
世の中には、自分の過去を語れない人々がいる。ひっそりと招待を隠して生きている男たちが、3箇所に現れる。
ある男は心身に傷を持つ、尽くしてばかりの女の元に。
ある男は、同性愛者でエリート社員のアパートで暮らしている。最初に肉体関係を結んでから、居候となるが、・・・。
またある男は、無人島に暮らし、全国を旅しているという。
周りのものは皆、男たちと親しくなり信頼していくが・・・・。
最後に「怒り」とは、真犯人に対するある者の感情だったことがわかる。
物語の冒頭に、夏の暑い日に自分に麦茶を飲ませてくれた、中年女性と後から帰宅したその夫を刺殺した血の海の中に、被害者の血液で書かれた言葉が「怒り」だとあったが、何故そこまで見ず知らずの夫婦に対して突然の「怒り」を持てるのかは最後まで、書かれていない。
犯人の動機はわからないままだった。これは、読者が考えなさいということなのだろうか。確かに、世の中には「人を殺してみたかった。誰でも良かった」という殺人事件が、頻発している。
最後の最後に、希望は持てたが・・・。犯人の心の奥を知りたかったので、マイナス1★
映画も是非見てみたい。