ちょス飯の読書日記

 『私の消滅』  ★★★☆☆
 
 

私の消滅

私の消滅

 これは怖い。人の脳を精神科医が洗脳したり、催眠療法で記憶を作り変えたり植えつけたりできるというが、・・・。

 愛する人を自殺に追い込んだ男に復習するという筋だが、「宮崎 勤」の心理分析も作者によってなされている。
 
 私も、4人もの幼女を誘拐して殺した犯人を、死刑にするのは当然だと思う。被害者遺族のあまりの悲しみに同情する。彼を絶対に許せないが、何故そのような行為をするに至ったかについては、彼の生まれつきの障がいやいじめられた経緯をもっと徹底的に調べてプロファイリングするべきだったとかねてから思っていた。

 宮崎は、統合失調症、多重人格、乖離性人格障害など精神疾患を持っていただろうが、もしかしたら小学生の頃から、いじめや性的な暴行も受けていたのかもしれない。

 もし、彼を愛し理解してくれる友人がいたなら・・・。いじめがなければこのような大それた犯罪をする者にはならなかったと思えて、私は辛くなるのだ。
 ねずみ人間が彼の中に生まれたのは、彼本来の異常性だけでなく、祖父の死や、周囲からの圧力が加わったからだろう。

 また、女性を絶望に追い込む「悪業」について、中村は近親相姦、義父からの性的虐待、母親からの恨み、輪姦などを、お決まりのパターンとしている。これはどうかな。

 確かに、レイプされた女性は心身ともに傷つき、一生涯苦しみ続けるだろう。しかし、そういう人がほとんどだとしても、決してレイプに負けない女性もいることを私は、桐野 夏生や坂東 真砂子の小説で読んで知っている。

 ゲスの極みの男どもに、もし体を汚されたとしても、心打ち砕かれない強い女性がいることを、中村に知らせたい。