同窓会

 6日、文字通り30年前に、社宅アパートで共に暮した同窓生たちとランチ会をした。

 結婚して暮し始めたのは同年だが、年長のchosu-manmaは、リリー・フランキーが好きだという厚化粧と目一杯の派手な衣装で若つくりして参加。

 すると、窓友は地味な平服姿。薄化粧でやってくるではないか。若々しくて綺麗なので完敗。脱力。

 お店はお洒落な地中海料理のお店で、女子会好みのお料理だった。胃もたれのするchosu-manma向きで少量なのが有り難く、安くて美味しかった。
 ふたりは仕事をしているので、近況やそれぞれの職場の話などを聴き、主婦でピエロのchosu-manmaは、おどけて皆を笑わせるのだった。

 しかし、ピンクの軽自動車で送迎してくれた桐ちゃん(仮名)の話は、怖かった。
 ご主人キンタ(仮名)が変なのだ。以前から変人だとは思っていたが新婚当時はどの窓も、皆熱々で幸せ競争の状態だったから、気付かなかった。
 それぞれに授かった赤ちゃんを、どのご亭主も可愛がっていた。その姿しか思い出せない。
 30年経てば、変わってくる。キンタの生育歴―――両親に虐待されて育ったということも初めて知って、哀しかった。
 そして、亡くなった父親のことも、ホームにいる母親のこともずっと恨み続けているということが、キンタの行動に拍車をかけている・・・。彼自身は、頑張りやの妻のおかげで、快適な暮らしをしているというのに。この30年間、自分も人の親となり、ふたりのこどもを愛して育てたというのに。彼の復讐心は、揺るがなかったのだ。

 桐ちゃんの話では、キンタがある資格を取り、来春定年退職したらその講師となって働くから、会社とはおさらばするという。それは、目出度い事だ。が、その資格が非常に胡散臭いのだ。
 なんと200万円も学校側に支払ったという。キンタはこれで、一生安泰だと「取らぬたぬきの皮算用」だそうだ。世間知らずのキンタ。
 
 朝9時から夜7時、8時まで働いている桐ちゃんは帰宅してから、キンタに夕ご飯を作る。キンタは5時には既にご帰還なのに、ずっと遊んでいて「飯奴隷」が帰るまで待っているそうだ。そんな。

 可愛い子供達をふたりともに私立の中、高、大学を卒業させてアパート代も学費も、桐ちゃんが工面して支払ってきたようだ。キンタの収入は、大会社のエリート社員だから、無論chosu家よりは相当多いだろうが、マンションのローンも残っているだろうに。
 200万円は夫婦ふたりの共有財産だったろうに。

 もし、退職後にキンタの事業が失敗したら・・・。chosu-manmaは、桐ちゃんに、「こどもたちの結婚・独立を待って、離婚もありでは?」と言おうと思う。
 桐ちゃんが、どんなにキンタのご両親に孝行してきたことか。彼は、その姿を見てなんとも心を動かさなかったのか。余計なことだと思ったのだろうか。わからん。

  
 一番怖いと思ったのは、桐ちゃんが夫の言い分を受け入れて、多分大丈夫だろうといいながら、物忘れが激しかったりズボンの左右の長さがちがっていたり、頭髪が薄くなってしまっていたこと。
 先日出したchosu-manmaからの手紙の内容を、みんな忘れていたこと。少しは覚えていたが・・・。

 辛いことを忘れようとすると、人は他のことも覚えていられなくなるのではないか。ただの物忘れなら良いが・・・。ふたりのこどもたちが結婚して独立するまでは、桐ちゃん無理せずにいてほしい。まさか、若年性アルツハイマーではないだろうが、・・・。調べたら、とは言えない同窓生のchosu-manmaだった。
 キンタに直接会ってみたいと、頼んだが「いいよ」と言った後で忙しいから来年とのことだった。

  25年前chosu-pampaが突然会社を辞めて、社宅を出ることになったchosu一家。
 仕事も転居先も見つかっていないchosu一家のことを、皆気の毒がってくれた。chosu-manmaは、社宅一、カワイそうな妻となったのだが・・・。

 3人の親しかった、新妻たちがchosu-manmaを何かにつけて励まして、転居先にも遊びに来てくれたものだった。
 社宅に一緒に暮していても、会社が同じでも、職場が違うと夫同士は仲良くならない。まして同窓会などしない。
 桐ちゃんの力になりたい、もしものときには。ぐっと拳を握り締めるchosu-manma。