ちょス飯の映画評
『天空の蜂』 ★★★★☆
- 出版社/メーカー: 松竹
- 発売日: 2016/02/03
- メディア: DVD
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原作をかなり変えてあった。
ひとりひとりの人が登場人物になりきって演じている映画は、活字だけを読んで思い描く物語とは違う。
ヘリコプターが飛立つ前に、物すごい風が巻き起こり、式典に準備された紅白の幕や紙や椅子がなぎ倒される様子には、圧倒された。文字で読んでいては想像できない、迫力がある。
原作とは別の作品だと思って、映画を観る。
とくに、三島は原作では原発のある一部分だけに関った技術者だが、映画ではかなり重要な設計者として登場している点が違う。三島を演じるのはもっくんだった。
本木 雅弘、彼の演技には、ものすごい鬼気迫るものを感じた。臭いものには、耳目を塞ぎ、見えぬものとして知らぬ顔をする大多数の国民への警鐘を、三島は命をかけて大きく鳴らした。
敦賀半島の先にそびえる高速増殖原炉・新陽を人質のようにとって、「日本中の原発を止めろ、廃棄せよ。さもなくば、上空に停めてあるヘリコプター、ビッグビーを墜落させる」と国を相手にした三島と雑賀。
「狂っているのは、どちらか。」
原発に勤務する人たちは、被爆しながら働き。そのなかに白血病や癌にかかる人がいる。
「この国は国民の命より電気の方が大切なのだ」、というセリフは的を射ている、
綾野 剛演じる雑賀のアクションシーンは、原作にない。要らなかったと思う。彼は恐らく病気で、先が長くなかった。その上での犯行だった。映画の中だとしても、残虐な場面は嫌だ。
犠牲者が出るのは辛い。故にマイナス1★。
大多数の物言わぬ国民が、無関心で国の原発政策に疑いを持たずにいること、その危険性は観た者によくよく分かった。
刺されてみなければ、蜂の針の痛みをこどもたちは知らぬままだ。父と息子の絆を取り戻す物語でもあるが、・・・。愛する者を失った者の癒しは、・・・。