ちょス飯の映画評
『64』 前編 後編 ★★★☆☆
- 出版社/メーカー: TCエンタテインメント
- 発売日: 2016/12/09
- メディア: DVD
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NHKテレビで、土曜ドラマとして既に制作放映された後に、作られた映画。TBSテレビ、ラジオで盛んに宣伝しているので、この映画はこの放送局とタイアップしているのだろう。
同じ原作を短い間に公開することになって、先に放映した方が有利だった。まったく予備知識無しで、テレビドラマを毎週はらはらしながら、観ていた。これは非情に面白かった。
途中で、「犯人はあの人だ」、と気付きそれが的中したのも、嬉しかった。連れ合いは、そんな馬鹿なと取り合わなかったのも、余計嬉しかった。
テレビドラマと見比べたくて、名画座の映画館で『64』前編後編を一気に観た。
すると、明らかにNHKの方が面白かった。予算は、映画よりずっと少ないだろうに。それぞれの役者も、芸達者ではまっていた。
映画は、派手に宣伝されていたが、俳優の主役級ばかりを揃えると何故か面白くなくなる。つい、宣伝文句に踊らされて、期待を膨らませていたことに気付いた。
刑事ドラマと言えば、たいてい佐藤浩市が起用される。彼は、オヤジを超えるくらいの偉大な俳優となったが、ピエール瀧の風貌と無心な怪演ぶりには到底及ばなかった。
脚本の最後はかなり違っていたが、やはりテレビの方が良かった。脚本なのか、監督なのか。キャスティングなのか。テレビドラマの方が、時間は多く使えるからか。
映画の大団円はつけたし感が否めない。
映画ではもっと、三上(広報官)の娘の苦悩を描いて、彼ら両親の「娘のいない」辛さを描いた方が良かった。
一週間だけの昭和64年に、少女誘拐事件が起き、平成14年まで未解決のままだという設定。無残な姿で発見された女の子しょうこちゃんの遺族は、その時から時が止まっている。・・・
刑事、犯人、被害者の父親、皆が娘の父親であり、それぞれに問題を抱えている。
そして、警察が、失態をずっと隠蔽し続けるという暗闇も、この映画のテーマだ。
ただ、新聞記者たちと警察広報が凄まじい攻防をしている場面には、驚いた。私たちは、新聞に書かれていることを鵜呑みにしてはならない。また、警察や国家権力の発表に、操作されてはならない。これも、原作者の言いたいことだったのだろう。
終わりに、地元の小正月行事のどんど焼きに、だるまや花餅を地元の人が持ち寄る場面があり、これは良かった。天高く燃え盛る火は、すべてを焼き尽くし清め、人に明日からも生きていく励ましの力を与える。
故に、★三つ。