ちょス飯の読書日記

 『天空の蜂』 ★★★☆☆
 

天空の蜂

天空の蜂

 今から21年前に、売れっ子作家が原子力発電所への攻撃がもし現実のものとなったら、と予測。2015年に映画化もされている。

 本の厚さ36mm。これは長いが、たった1日の7時間あまりを描いたサスペンス。刑事ドラマであり、原発の問題をそこで働く人、招致した村に住む人々、原発反対運動をする人、一番多い、原発に無関心な国民の姿を描いている。

 小牧の錦重工業会社での、新型ヘリコプター完成の日。防衛省へ受け渡すための領収飛行をする日に、格納庫のシャッターが自動で開き、ヘリコプターは自動で離陸していく。
 犯人は、まさかその中に、こどもが乗り込んでいるとは知らなかった。技術者の子供も、この日父親の5年がかりの仕事の成果を見るために、母親と来ていたのだ。

 ノンストップで読み進んでしまった。

 ヘリコプターは、なんと敦賀半島にある(架空の)高速増殖炉 新陽 発電所の正に炉の上空に到着。犯人からヘリコプターを落下させたくなかったら、日本中の原発を止めろ、廃棄しろというファックスが届けられる。爆弾も積んであると。

 こどもをどうやって、救出するか、原発を止めるのか。新陽は止めるな、という犯人からの要求に、国はどう対応するのか。

 原発は安全だ。ヘリコプターが落ちても大丈夫。放射能は出ませんと国は滑稽なことを言うのだが、周辺住民は、逃げ出す。しかし、逃げ出さない人も。

 作者は、原発について批判しているわけではない。しかし、そこで働く人が被爆している事は事実であり、白血病など癌になる人がいる。原発の周辺住民には、安全だといい続けてきた国のやり方、もしヘリコプターが墜落して、放射能が拡散する事態が起きたらそこは、テレビ中継するなというスタンス。犯人側の事情も、よく描いている。また、原発やヘリコプターのメカの説明がすごい。一般読者に、注ではなくきちんと分かり易く説明しているのだ。

 ねじれた結果は、読む者にもっと原発について考えてほしいと呼びかけている。

 ただ、7時間で犯人を見つけ出すというのはあり得ない。事件が終わってから、じっくり探し出すという展開の方が良かったのではないか。

 頭の良い犯人達は、決して無差別テロを望んだわけではなかった。また、自分の命をもう惜しまないでいる。
 小さな街の刑事達が、優秀過ぎる働きをしたので、違和感。故にマイナス2★