ちょス飯の読書日記
『天空の蜂』 ★★★☆☆
- 作者: 東野圭吾
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1995/11
- メディア: 単行本
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本の厚さ36mm。これは長いが、たった1日の7時間あまりを描いたサスペンス。刑事ドラマであり、原発の問題をそこで働く人、招致した村に住む人々、原発反対運動をする人、一番多い、原発に無関心な国民の姿を描いている。
小牧の錦重工業会社での、新型ヘリコプター完成の日。防衛省へ受け渡すための領収飛行をする日に、格納庫のシャッターが自動で開き、ヘリコプターは自動で離陸していく。
犯人は、まさかその中に、こどもが乗り込んでいるとは知らなかった。技術者の子供も、この日父親の5年がかりの仕事の成果を見るために、母親と来ていたのだ。
ノンストップで読み進んでしまった。
ヘリコプターは、なんと敦賀半島にある(架空の)高速増殖炉 新陽 発電所の正に炉の上空に到着。犯人からヘリコプターを落下させたくなかったら、日本中の原発を止めろ、廃棄しろというファックスが届けられる。爆弾も積んであると。
こどもをどうやって、救出するか、原発を止めるのか。新陽は止めるな、という犯人からの要求に、国はどう対応するのか。
原発は安全だ。ヘリコプターが落ちても大丈夫。放射能は出ませんと国は滑稽なことを言うのだが、周辺住民は、逃げ出す。しかし、逃げ出さない人も。
作者は、原発について批判しているわけではない。しかし、そこで働く人が被爆している事は事実であり、白血病など癌になる人がいる。原発の周辺住民には、安全だといい続けてきた国のやり方、もしヘリコプターが墜落して、放射能が拡散する事態が起きたらそこは、テレビ中継するなというスタンス。犯人側の事情も、よく描いている。また、原発やヘリコプターのメカの説明がすごい。一般読者に、注ではなくきちんと分かり易く説明しているのだ。
ねじれた結果は、読む者にもっと原発について考えてほしいと呼びかけている。
ただ、7時間で犯人を見つけ出すというのはあり得ない。事件が終わってから、じっくり探し出すという展開の方が良かったのではないか。
頭の良い犯人達は、決して無差別テロを望んだわけではなかった。また、自分の命をもう惜しまないでいる。
小さな街の刑事達が、優秀過ぎる働きをしたので、違和感。故にマイナス2★