戻って来た脇の臭い

 初潮を迎えた頃、脇が臭って困った。まだ小学5年生なのにお乳がまるまると大きく膨らんで来て、腋毛が生えてきた。
 そして、明らかに「女」の臭いが発散されてきたのだ。


 これは今思うと、もうこどもを産めるという、信号なのだろう。「オスよ、来い」とメスが臭いでおびき寄せようとして脇が臭うのではないだろうか。

 chosu-manma の母は、鼻が敏感で自分が若い頃ワキガのにおいに耐え切れず、手術した人だったので、娘の臭いにも嫌悪して、早速「ban」を買って来て、「毎朝塗るように」と教えてくれた。

 丸いガラス球が頭についていた。小さい円柱のビン。これを逆さにして、肌色のどろりとした、消臭成分の入った液をくるくると脇の下に塗って、11才のchosu-manmaは小学校へ通ったのだった。

 同級生達と違う臭いのする自分が恥ずかしく、大きな乳房が嫌でたまらなかった。

 ところが、それから40数年。閉経して数年経つと、アラ不思議。
 あの女の臭いがいつの間にかchosu-manmaの脇の下から消えている。きれいさっぱり。

 猛暑の中で汗だくだくになっても、もう「女」は、におわないのだ。

 もう、制汗・消臭剤をスプレーしなくても良い。(塗るタイプから、40年経つと、しゅっと一吹きすれば、汗の臭いを抑えられる時代に、かわっていった。)これは、嬉しいこと。晴れ晴れした気分だ。

 しかし、しかし、・・・。

 数日前から、ほんのりと女の臭いが戻ってきた。

 不思議だ。

chosu-pampaのせいかな?昨夜、桃をジッと見て、必死に描いたからかな。その後、がぶりと食べたからからかな。

 フランスなどでは、体臭をその人の個性として見なしているという。香水は、人体の匂いと合わせて、初めて魅力的な匂いになると考えているのだ。日本人は、清潔を良しとする。体臭を嫌う国民性がある。

 chosu-manmaも、ワキガの臭いをずっと悪だと考えてきたのだ。日本人として、当然だ。他人に迷惑をかけるほどの悪臭は、無論改善せねばならない。

 しかし、戻って来たこの自分の脇の臭いには、健気な気がするのだった。まだ、女性としての魅力がお前にはあるではないか、と体が心に教えてくれたようだ。ははははは