ちょス飯の映画評
『帰って来たヒットラー』 ★★★★☆
これは、面白い。
もし、現代のドイツにヒットラ−が、自死後ガソリンで焼かれずに少し、油臭い臭いの軍服のまま、生きて戻ってきたら。
ベストセラー小説を、映画化したというが、映画のラストは小説とは変えてあるという。
映画の中に、実際のドイツ市民達の中に、ヒットラーがいきなり現われて語り合う、記念撮影をするという場面が何度も出てくるが、・・・・。
市民は大喜びだ。中には、本物だと思って怒り出す人もいる。
しかし認知症の老婆が、正気に戻り「出て行け」と叫ぶ場面には胸が詰まった。
民主主義は、多数派が世の中を動かすという仕組みだが、第一次世界大戦の敗北で、国家が疲弊し混迷の一途、食糧もない状態のなか、大多数の市民は、力強い指導者を望む。それは必定だったことだろう。
ヒットラーが狂人だったことは、誰も知らなかった。
彼の言動に、何の疑いも持たなくなっていく。それどころか、国家財政を立て直すためには、不要な人々を先ず殲滅し、ユダヤ人を根絶やしにしなければならないという政策を支持したのだ。
ユダヤ人とは、ユダヤ教を信じる人々のことだが、ある一部の人々にはたくさんの資産があった。彼らを収容所に送り、持ち物すべてをぶんどる。それを国家財政の助けにする、という意味もあったことだろう。
・・・ドイツ国民こそ、最高で血の純潔を守らねばならないという彼の主張は、どの国にも存在する。ナショナリズムはますます強まっているのではないか。
現在シリアやアフリカからの難民を排斥しようとする人々が、増えて来ている。混迷を深めるドイツ、いや世界の国々。独裁者の登場を期待する人々も実は、いるのかもしれない。恐ろしい。ことだ。
震撼とさせられるが、実はこれはコメディとして作られている。大笑いする場面も多かった。
ヒットラーは、非常に弁舌が巧みで、なるほどと思わせられる。そして、ユーモアもあり、チャーミングなのである。彼のカリスマ性を観客も感じてしまったことだろう。
あっと驚くラストには、哀しかった。何が事実で、どこからがドラマなのか。最後の場面は、映画を観ていた人のことなのか。
故にマイナス1★