ちょス飯の映画評

 『めまい』  ★★★☆☆
 謎めいた、行動をする美女が、何故自殺願望を抱き続けているのか。スリルとサスペンスの味わえる、推理小説のような物語。

 しかし、前半で美女が自殺してしまう。ここで終わりなのかと思ったら、その謎解きが後半にあった。

 種明かしが、ちょっと早すぎて、あっけない幕切れは哀しかった。

 街の金持ちで顔役の男が、水商売の美しい女に一目ぼれして、囲うことなどごく普通のこと。
 彼女にこどもが生まれると、育てさせる場合もあっただろうが、本妻に取られてしまうことも多かったのだろう。
 かわいそうな女は、こどもをとられて、悲しみのあまりに狂い死にしてしまったという。

 そのエピソードは辛かった。それは、自殺した美女の曾祖母の物語。曾祖母の若き美しき肖像画を、じっと見続ける美女。

 不可解な行動に、彼女の夫から尾行を頼まれた男は・・・

 ラストがよくない。救いがほしかった。

 「あっ」と思ったらジ・エンドでは。残念だった。恐怖や罪悪感が、人を思わぬ行動に駆り立てることはあるものだが、・・・。

 アメリカ映画は、いつもハッピーエンドでヒロインとヒーローのキスシーンで終わるものだった時代に、よくこんな終わり方を良しとしたものだ。故にマイナス2★

 『サイコ』  ★★★★☆
冒頭は、真面目に働いていても報われない薄給の美女が、会社のお金を横領して逃げるので、観客は彼女の逃走劇かと思う。
なんとか、無事に逃げおおせてほしい。
しかし、物語の主題はここではなかった。

彼女が、自分の車を中古車販売会社で売り、別の車で逃走。
夜遅く、老母と中年の独身息子が経営する、しがないモーテルを見つけて、「やれやれ」というところから、始まるのだ。

息子は、鳥の剥製つくりを趣味としていて、母親に従い、世間から孤立。母とふたりだけの世界に生きていた。

有名なシャワーシーンは、当時はまったく恐ろしい描き方だとされたのだろうが、今の恐怖映画のグロテスクな殺戮シーンを思うと、観客の心臓に充分配慮してあると思った。

あっと驚く結末は、当時としては革新的だったことだろう。

当時のアメリカ社会の背景、車のかっこよさ、登場人物の美しさに魅せられる。しかし、もう少し彼女が殺されるまでの、「ため」がほしかった。故にマイナス1★