ちょス飯の読書日記

 『真昼の心中』 ★★★★★

 坂東の最後の短編集。江戸の女達の恋愛模様。大奥、商家、武家の裕福な娘達の男遍歴が、描かれる。

 女の中の男の心というか、暗部を描き切っている。自分の恋愛を成就させるためには、火をつけても人を殺しても構わない。あるいは「心中」に憧れて、軽い気持ちで相手の男に死を押し付けようとする、娘の夫殺し未遂。

 どの章も面白かった。表題作より、最後の「暗い夜明け」が秀逸。作者の絶筆だ。

 女が性交の快楽を至上としても、やはり肉欲だけの関係には、破綻がくる。年も取る。

 しかし、男だけが性を愉しみ、女はその道具に過ぎないということは、決してない。

 自分らしく、最後まで堂々と、生きようとする女のたくましさ、強さに圧倒された。