ちょス飯の読書日記
『夜また夜の深い夜』 ★★★★☆
- 作者: 桐野夏生
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2014/10/08
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (8件) を見る
これだ!!これこそ桐野節。若い少女のサバイバル。ナポリの貧民街に住むマイコが、不法滞在者のふたりの女の子と、小物の悪者や得体の知れない巨悪に負けず、生き抜いていく物語だ。
最後は、痛快ではあるが、やや呆気なく物足りないのでマイナス1★。
マイコが、母親にほぼ監禁状態で育てられ、それになんの不思議も感じずにいたが、あるとき日本語が読み書きはできるマイコに「マンガカフェ」のちらしをくれる男が現れる。
物語は、マイコが古い雑誌で知った憧れの「七海」へ返事が来なくともずっと書き続ける「手紙」の形で始まる。
マイコが、マンガカフェに入り浸り、マンガから日本の文化を知り自我に目覚める。マンガを非常に気に入るのだが、母親は、娘の変化に恐怖する。
彼女の言葉がおかしかった。「日本人は家畜。」「マンガに描かれているのは、うそばかり」
そして、家出したマイコを仲間として迎えてくれたふたりの友人達は、それぞれの母国を脱出せざるを得なかった、凄まじい過去を持っていた。
女はレイプなどで心を汚されたりしない、というリベリア出身のエリスの地獄の体験は、事実に基づくのだと思うと震撼となった。ふたりは、本当に明るく生きている。
辛い体験などに、自分のこれからの人生の価値を減らしたりしないのだ。
何故、正義の名の元に大国は、世界中で火種を撒き散らして、小さい国の人々の暮らしを地獄に落とすのだろうか。許せない。
また、マイコの顔写真がネットに載せられることで、世界中に追われることになるという今日のネット事情も、背景にあり面白かった。
『地獄めぐり』 ★★★★★
- 作者: 水木しげる
- 出版社/メーカー: マガジンハウス
- 発売日: 2013/06/27
- メディア: 大型本
- この商品を含むブログ (2件) を見る
水木しげる氏が、幼い頃のんのんばあに連れて行かれた、境港市に現存する正福寺に掲げてあった地獄絵図が、彼の人格形成に大きな影響を与えたのだろう。
子供向けの地獄絵本だとはいえ、あまり幼い子には見せたくないが、・・・。
人間の体が、痛めつけられたり、ちょん切られたり血を流したりしている姿を見せるのは、ちょっと影響が恐ろしいから。
しかし、ユーモラスでもある。地獄の鬼達も、あまり恐ろしくない。
悪いことをすると、地獄へ落ちて死んでからこんなにもひどい目に合わされるのだと、信じる人は本当に善行を成す人として成長する。
こんな酷い目に遭わされたくない、だから生き物を殺さない、盗みをしない、悪さをしない、酒に溺れない、嘘をつかない、悪い考えを広めて世の中を混乱に陥れないと彼は、幼な心に誓ったのだろう。
chosu-manmの母は、「死んだら地獄へ行くからいい、自分の友達も地獄にいっぱい行っているから」と言う。彼女は、嘘ばかり吐くし周りの人の心を傷つけてばかりいるから、多分そうなる。しかしまた、「死後の世界なんかあるものか、死ねば何もなしだ。」と賢いことも言う。
chosu-manmaは、地獄と浄土を信じている。まったく罪を犯さずに生きることは出来ないが、日々自分の生きる糧として、他の生き物の命をもらって(殺して)生きながらえていることに、感謝して、なるべく無駄な殺生をせず、他人に悪さをせず生きて行こうと思っている。