ちょス飯の読書日記
『追想五断章』 ★★★★☆
- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2009/08/26
- メディア: 単行本
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ある短編小説五篇を、揃えてほしいと父を亡くした美しい女性に頼まれて、一篇に付き10万円という破格の依頼に喜んで応えようとするが・・・
失望した人々ばかりが登場してきて、暗い背景だ。
劇中劇のように、亡き父の遺作が見つかりこの物語の間に挟まれる。これは、なかなか面白い話ばかりだった。世界の辺境の地を旅する男が、それぞれの地で「奇妙な話を聞いた」という書き出して、結末は書かれておらず、別紙に五つの結末の文が書かれており、娘が父親の遺品から見つけたという。
奇妙な話の最後には、人が必ず死ぬのだが・・・。
20数年前娘が4才のとき、一家でヨーロッパ旅行をしていた時、その宿泊先のベルギーの高級ホテルで母は自殺している。
そのため、父は帰国した時、妻殺しの疑いでマスコミに叩かれた過去を持っていた。本当に、父は母を殺したのか、また父とは母は愛し合っていたのか・・・・。
父は、何故このような物語を書いたのか、誰に読ませたいというものではなく、せめてマスコミに一矢報いたいと思ったのだろうか。
一人娘の彼女にとって、すべてを読みたいと思ったのは、真実を知りたかったからだろう。
しかし、一般の家庭の子供達だって、愛し合って結婚した夫婦のこどもとは限らない。またはじめは熱々で結婚しても、こどもが生まれて育てていくうちに仲違いしたり・・・・
米沢には、現実を見つめる冷たい眼がある。物語の落ちは、まあまあだが、もっと救いが欲しかった。父の娘への愛は、ひっそりと静かに彼女に伝わったのだろうが。