ちょス飯の読書日記
『聖痕』 ★★★★☆
- 作者: 筒井康隆
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2013/05/31
- メディア: 単行本
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こうきたか!!
物語は、美少年がその美しさゆえに不細工でゲスの極みの男女に恋い焦がれられるという危機を、必死に耐えぬくもの。という、単純な話ではない。
5才にして、変態に付け狙われた主人公貴夫は、陰茎と陰脳を切り取られてしまう。彼と彼の家族の哀しみは、尋常ではない。
筒井氏は実験小説とも言うべき、物語を構築した。
あまりに悲惨な、性犯罪被害者となってしまった主人公だが、生殖器が無いことを周囲に気取られぬよう、必死に子供時代を過ごす。
ただ、不細工で色黒愚鈍な乱暴者に育った弟が、それを知ってしまい・・・
家族の再生の物語でもあり、作者の被害者の心の救済を願う物語でもある。
この物語は、朝日新聞朝刊に掲載されていたという。
バブルmバブル崩壊、阪神大震災、オウム真理教事件、そして東日本大震災の背景も物語の登場人物に多くの影響を及ぼす。
物語の中の人々も現実を生きているように、描かれているのだ。
しかし、最後の場面には本当に驚かされた。
アンジェリーナ・ジョリーの最新映画を観てみたい。
ずっと筒井氏の長編作品を読んだことがなかったが、やるじゃないか。
講談を聞くような書きかたで、誰がなんと話したという¬括弧がない。明治の文語表現なのかやたらと、難解な熟語やオノマトペなどが出てくるが、注意書きが左ページに必ずつけられており、非常に分かりやすかった。
但し、マイナス点は主人公の美しさを、もっと丁寧に描写するべきだった。読者の想像力を期待しているのか知らん。
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