ちょス飯の読書日記

 『旅果ての地』    ★★☆☆☆

旅涯ての地―DOVE UN VIAGGIO TERMINA

旅涯ての地―DOVE UN VIAGGIO TERMINA

 二段組の、小さい文字で分厚い本。マルコ・ポーロの家の奴隷夏桂が、異端とされたキリスト教の一派「善き人」の聖杯(太陽をまとう女の板絵・イコナ)を偶然手に入れたことで、数奇な逃亡生活を送るが、彼が、真の心の解放を得るまでの長い長い物語。

 一か月以上かけて読了。

 当時の、宗教対立の恐ろしさに度肝を抜かれた。

 他の宗教との対立なら、まだ分かる。しかし、同じキリスト教の信者同士なのに、主流と異なる教えを信じると、異端と見なされ、火炙りで殺されてしまうのだ。

 しかし、殺される側は安心して「天国へいける」からと、逃げない。逃げ出したものは、ずっと苦しみ続ける。

 物語は、史実を基に描かれたのだろうが、正に眞砂子ワールドだった。
 夏桂は、宋の商人と倭の花旭塔津(はかたつ)の船主の娘との間に生まれたが、元寇のとき家族をすべて殺されて、東の果てから西の果てベネツィアへ、ポーロ家に仕える奴隷としてやってくるところから物語が始まる。彼は、タルタル人と呼ばれているが、板絵を持ったことで、追われる身となり隠まってもらった善き人の教会ではザンザーラと呼ばれるようになる。
 
 しかし、彼は、最後までキリスト教の信仰は持たない。

 肉欲を否定することは、欺瞞であり不自然だと眞砂子様は、いつも描いている。そして、マグダラのマリアによる福音書が存在していると。

 救慰礼を死の直前に受ければ、すべての自分の罪が許されて、天国へ行ける、と信じる「善き人」たち。

 しかし、ヒロイン・マッダレーナが、信仰の仲間に加わった理由が、「自分が幸せすぎるから」「苦しんでいる人々に申しわけない。彼らを救いたい」という。これは、文学的だがそういう人も確かにいるのだ。
 死が迫ろうとも、最後の最後まで、信仰を捨てない人もいるのだ。

 難渋するけれど、読んでみてみる?

 外国人の登場人物を、想起できず私にとっては読み辛かったので、星2つ。