くびになる日

 とうとうその日が来た。

 くびだと言われても、くさらず、この一月尚一層、働いてきたchosu-manma。泣くものか。後もう少しだ。桜の花びらを最後まで、かき集めて駐車場をきれいにして辞めたい。

 相棒のGさんは、花びらなど掃かない。実に適当だ。

 最後の日は、裏の台車置き場の下の去年の落ち葉も竹箒で穿り出してビニル袋に詰めて、まずゴミ置き場に置いて、いざ、二階の駐車場へと向かった。

 店の前を掃きながら進むと、chosu-pampaが言いつけどおりやって来て、妻の奮闘場面を撮影してくれた。

 さあ、二階だ。こべこべに藻のようにコンクリートにへばりついた苔、ほこりと土そしてせんべいのようになった白灰色になった花びらたち。

 しゅっしゅっと箒ではがし、急いで袋に入れていく。

 次には店内の床洗浄が待っている。ここで使える時間は20分。毎日少しずつはがしておいたから、最後に丁度仕上がるはずだ。

 誰も、気づかない。「綺麗になった。」と言わないが、あのおばさんがやったとは思わないだろう・・・・。

 だが、誰かに誉められたくて、知られたくてやっているのではない。雇ってもらった限りはベストを尽くすのみ。
 綺麗にするのは、当然だ。うんがーーーー

 がんばれ、自分!いいぞ、いいぞ、chosu-manma!!

 汗だくだくになって、遂に終了の時が来た、初めて化粧をしてきたが、どろどろに溶けてしまった。

 更衣室へ、かねてからの作戦通り、英国製の紺地に白い花柄のワンピースに着替えた。これは、慈善バザーで2000円で購入したものだ。中古の偽象牙のネックレス200円もクビにぶら下げた。

 昨日はこの日のために、ふんわりとフロントパーマをかけてきた。だが、汗でしめって、うまくふんわりとした髪型にはならなかった。

 颯爽と、主任や同僚に感謝の言葉を述べて笑顔で職場を後にした。
「どこかへ、お出かけするの?」口をあんぐりとあけた、主任。
「いいえ、自宅に帰るだけです。」
 店は、もう開いてる。アイスコーヒーとドーナツを買い、ベンチに座った。

 ありゃりゃ、もう、あちこちにゴミが。くっそお。拾ってから一服した。

 そして日勤のJさんにも、皆に渡した別れのプチガトーを手渡ししたくて、彼女が通るのを待った。彼女は9時半のバスで来るはずだ。

 だが、40分まで待っても来ない。

 仕方が無い。店に、リサイクルのがらを捨てに行くと、Jは、二階駐車場から降りて来た。夫に、車で送ってもらったのだろう。

 「主任がWワークしても、かまわない。替わりに出るから」、と言った彼女だが・・・。実際は、朝6時半に出て朝金と続けて働くこと12時まで勤務になってしまうので、70過ぎて弱った体では、毎回は替りが出来ないだろうし、するつもりも無いだろう。
 
 恐らく話し合いのときだけ、そういったのだろう。

 それが、大人の対応だとchosuは言うが・・・。

 許す。主任も、先輩方も皆許す。先月の求人広告を見て応募してきた人がいないから、次のパートが見つかるまで、結局欠員のまま皆は働かねばならない。主任と会社の方針でchosu-manmaを解雇したのだから、こちらには責任はない。

 さあ、chosu-manmaには、次の仕事が待っている。両膝もまた痛くなってきた。体を休めて、まず家の断捨離だ。

 この日、配当は少ないがNHKマイルが、馬連的中。翌日には、故郷で置き忘れてきた杖も発見された。帰省時に、お見舞いした恩師からは数万円もする、グッチのトートバッグを頂いた。友人からは、高級和菓子が励ましのメッセージと共に届いた。

 ああ、ついている。chosu-manma。