ちょス飯の読書日記

『屍の聲』かばねのこえ     ★★★★★

屍の聲

屍の聲

 1996年坂東がタヒチ在住の頃の、田舎を舞台にした恐怖短編集。著者の実の祖母をモデルにした、表題作は認知症になって、日々壊れていく愛する家族とどう対峙するかが描かれる。ふと、正気に返ると、祖母は自分の惨状に気付き、「もう生きていたくない」と言う。
 真に愛していたからこそ、孫の布由子は祖母の死を願う。

 死に行く人、死後にまたこの世に出てくる人がよく坂東の作品に出てくる。表題作同様、他の短編も実に面白く、予定調和の結末はひとつもない。面白い。

 『桐野夏生対談集 発火点』    ★★★★★
 

対論集 発火点

対論集 発火点

 松浦英恵子、星野智幸佐藤優などとの対談集に、われらの坂東眞砂子様も登場。
 彼女がミラノ、タヒチを経て故郷である高知の山奥の村に移住した直後の対談。二人がそれぞれ『ポリティコン』『やっちゃれ、やっちゃれ!』を書いていた頃だ。

 私は桐野夏生が大好きだったが、短編や縦横無尽の物語を作り続けた坂東の方に軍配を上げる。あれほど緻密に、組み立てて破綻が無く語り終えられる物語の作り手を私は知らない。
 古今東西の著作を、ほんの少ししか知らぬから言える事なのかもしれないが。私の読書歴の中では、彼女が最高の作家だ。

 対談では、人間の悪意、ダメさを書きたいと二人で一致していた。