ちょス飯の読書日記

 『パライゾの寺』 ★★★★★
 高知の明治から、昭和戦後の頃までの、いろいろな事件を元に、当事者の話として聞き書きしたという形の短編集。

 表題作は、明治2年高知の浜辺の村に、浦上村から隠れキリシタンだった農民が改宗をさせるために、流されてくる話。

 明治になったら、信仰の自由が保障されたと学校で習っていたが、本当は違っていた。知らなかった。まず驚いた。

 村人は、江戸時代にも代々棄教せず隠れて、おらしょを唱えて来たツワモノ。だれも、せまい竹やぶの中の小屋に押し込められて、最低の食べ物しか与えられなくとも、一向に改宗しようとはしない。そこで、遊女を抱かせれば、となるが・・・。

 これより、『まんなおし』『朱の棺』 『お接待』が出色。

 女が、誰も見ていないところで海に向かって、立小便をしただけで、産んだばかりの子を取られて離縁される。
 女の陰が、船の運航に悪運をもたらすというが、・・・。男は立小便をしても何の咎めもない。

 いつも、坂東の筆は、男にも、世の中にも負けない女を描く。小気味良かった。また、愛するものを殺すまで追い続ける、男の執念。死者が生者に語りかける場面も。

 まさに、坂東氏は、既にこの世にはいないが、遺した作品は私たち読者に大いに語りかけてくる。

 どの話も、非常に面白く力強い女が出てくる。


 常民の話を聞き書きした、宮本常一のような人物が聞いた話として書かれている。宮本常一の著作も、読んでみたくなった。