ちょス飯の読書日記

 『血と聖』(聖は「ひじり」、修道士のこと)★★☆☆☆

血と聖

血と聖

 イタリア留学時代にヒントを得たのか、17世紀に空中に浮揚できる聖人がいたことをエピソードに入れたかったのか、富裕な商人の娘タミラと修行僧アルノルフォの悲恋の物語。
 
 だが、初めての性体験は歓喜をともなうものではない。タミラは、偶然一度交わりをしただけの相手の僧に焦がれ、遂に狂い自殺してしまうが、その小間使いの未亡人アウレリアは、彼女を殺したと濡れ衣を着せられ、隠遁生活を送る。

 宗教者の肉欲は許されない。が、作者は性の喜びを何故、悪魔の所業とするかを、よく書いている。

 もう少し、ひねりがほしかった。最書の場面が、物語から30年過ぎていて、しかも・・・

 邪宗とされる原始的な古代の宗教を信じるタミラたちは、魔女とされた。異端視されて、ばれてつかまれば殺されるという時代。そのときにも、古来からの信教を捨てない人々がいたのだろう。

 そこをもっと、読みたかった。

 この逆転の終わり方は、面白い。