ちょス飯の読書日記

 『広島カープ誕生物語』  ★★★★☆

中沢啓治著作集 1 広島カープ誕生物語

中沢啓治著作集 1 広島カープ誕生物語

 丁度高校2年生で行った広島の町は、カープの初優勝で沸き立っていた。ビルには垂れ幕があった。

 1975年10月の優勝時の場面、涙があふれた。原爆孤児の進がカープ結成当時からずっと応援し続け、遂に優勝を果たすまでの物語。豆腐屋の養子となり、娘と結婚してはいたが、式を優勝してから挙げるという夢がかなう。

 広島の人々が熱くなりすぎて、審判に暴動のように襲い掛かる場面も描かれている。ルーツ監督が弱小チームに、闘魂を植え付けるがすぐに審判への抗議を引っ込めず辞任、その後さいおとなしい古葉監督が優勝監督となったことは、知らなかった。当時の女子高生には関心がなかったのだろう。
 
 資金の無い中で、市民が一丸となって育ててきた姿。樽募金。トイレから球場へ忍び込もうとしていた輩がいたことはおかしかった。

 豆腐屋のおっさんのラッパで、いつも応援していた進がコンバット軍団を作ったとあるが、これは物語上のことかな。

 選手を駅までファンがのぼりを持って迎えに行く場面など、熱気とユーモア、中沢啓二先生のカープ愛にあふれている。「はだしのゲン」と変わらない筆致。看板、町の様子。口ずさむ歌の歌詞。人の表情と手ぶり身振りが懐かしい。

 ただ、他チームの様子が描かれていないし広島ファンへの偏見、アンチ広島の人々の様子も。ここだけマイナス1★。