ちょス飯の読書日記

 『死国』  ★★★☆☆
 

死国

死国

 著者初めての大人向き伝記ロマンホラー小説。後の彼女の作品に通じる始まりの物語。最高潮の作品から比べると、★マイナス2

 古事記から四国お遍路のこと、死者を蘇らせる「神の谷」と魂を天に送る「石槌山

 やはり最後には流血の場面があり、怖かった。

 主人公比奈子が東京での生活に疲れ、20年ぶりに故郷高知県矢狗村(やくむら)へ帰ると、一番仲の良い幼なじみだった莎代里が亡くなっており、既に15年も経っていた。村の様子は変わっていたが、小学校時代の同級生の多くが村から離れず、結婚し子を産み育て、ずっと暮らして仲良くしている。

 死んでいる莎代里に、生きているものたちは惑わされ、苦しめられる。死者の声を依り代となって伝える代々の家の娘だったこともあり、母親は彼女を蘇らさんと必死だ

 亡くなった人に執着しすぎてはならない、昔からよく聞いたものだが、こういうことか。

 やはり亡くなった者には、あの世での幸せを願うべきだ。呼び戻してはならない。この世にある限り、幸せに生きようと努力している姿を、もういないあの人に見せよう。

 莎代里が比奈子を対等な友人としてではなく、金魚の糞と思っていたことに驚いた。同級生の誰とも話さなかったのは、皆を見下していたから。とある。

 ずっと恋していた文也を、幼い頃から見つめ続け死して尚、交わろうとする執念。恐ろしかった。

 サイドストーリーのばあさんの愛人の話とお遍路の妻が出産途中で難産の末亡くなった場面は凄惨だった。

 この村では、胎児を別に葬るしきたりで、墓場まで棺桶を運び、母親の腹を掻っ捌いてどす黒い胎児を村人が取り出す。そんなところを、遍路から帰ってすぐ見たとしたら・・・夫は発狂しかねない。本当に世にも恐ろしい場面だ。