ちょス飯の読書日記
『神祭』 ★★★★★
- 作者: 坂東真砂子
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2003/06/25
- メディア: 文庫
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怖くて気持ち悪いが、ユーモラスでもある。
表題作は老婆由喜が、稲刈りをしているところから始まる。ふっとある祭りの日の光景を思い出す。その一瞬のことを描いている。
奇しくも、知人が同じ体験をしている。彼女も、自宅で飼っていた、卵を産まなくなった雌鳥の首をちょん切るところを、見てしまった。鶏は、何故か頭が切り離されても、首から下は生きていて走って行ったと。
そのときの光景が忘れられず、知人はチキンを一切食べない。
由喜も、鶏を哀れに思う。女の子を既に2人産んでいるのに、姑は男の子を産め産め、とうるさい。
卵を産めなくなった鶏と男の子を産めなかった自分が、同じように思えたのだった。これは怖いが、素敵な結末だから、読んでみ。
他も、皆面白い。巻末の戦後10年、ずっとアメリカ人を憎み続けていた青年の話。戦後、一般の日本人はどう思って、アメリカを許して生きてきたのか、ひとつの答えがあった。
ごくごく、平凡な人ばかりが登場する。そこに起きるのは、日常的で、小さな小さな事件。こういう小説もあるのか。