ちょス飯の読書日記

 『黒鳥』  ★★★★★
 

黒鳥―ブラック・スワン (白泉社文庫)

黒鳥―ブラック・スワン (白泉社文庫)

 表題作より、家族の愛憎を見事に描き出した男と女、父と娘、母と息子の物語の方が読み応えがあった。

 とくに、母と息子のゆがんだ愛情の行き着く果ての『鬼子母神』は非常にリアルで、今日的な問題を扱っている。
 優秀な息子にまるで恋している母親。他のきょうだい(ここでは娘)も、夫も眼中に無い。
 高校入試まではトップの成績だった息子も、トップクラスの子ばかりが集まる高校では、ビリになってしまう。
 お決まりの登校拒否、家庭内暴力

 父親は子育てに一切協力せず、妻の息子となっている。問題が起きると家に寄り付かない。優秀な時だけは、息子を自慢していたのに。 

 また『緘黙の底』では、父親からの性的虐待が描かれている。本当に悲しい、信じたくないことだがこういう虐待が実際に行われており、子どもは自分で助けを呼ぶこともできないという。

 漫画が、問題提起をして社会を啓発することもあるのだ。

 かわいい小学生の少女が最後は救われた。養護の先生自身も虐待を体験していたことで、気づくことができたということだったが。
 
 父性を持たない父親も、ある程度の割合でいるのだろうか。どうか、早期発見と虐待の防止をと願わずにはいられない。
 
 人の罪のうち、一番恐ろしく卑怯なものは親による子の強姦である。

 このような異常犯罪者を、罰することは勿論だが、その異常心理の解明と治療方法を生物学的に研究して欲しいものだ。