ちょス飯の読書日記

 『もらい泣き』 ★★★★☆
 

もらい泣き

もらい泣き

 どの話も、本当にあったことが持つ意外性、迫力にあふれている。そして、読者ももらい泣きしてしまう珠玉のエピソードばかりだった。

 苦しい時代があり、必ず救いがある。誰かが誰かの役に立っている。誰も大切なかけがえの無いメンバーだ。
 
 若くしてアルツハイマーになってしまった妻の化粧をし続けた作家の話と、震災後、老犬が飼い主の女子大生を守るため、急にしゃきっとなって自分の力のすべてを出し、彼女の生活が安定してきた頃、役割を終えたとばかりに安心して、死んでいった話がとくに印象に残った。

 巻末の公募作品も、素人の人の日常の中で「救い」があることを書いていた。

 このエッセイ連載中に2011.03.11がやって来た。

 福島在住だった筆者も計り知れない衝撃を受けたと思う。

 彼のテストパイロットだった祖父のエピソードは、素晴らしかった。被災地の人も読んだだろうか。

 大変な心の傷を負った人への応援、読む薬でもある。