大正琴にしびれる

 19日。スーパーの清掃パートをしていたときの同僚が、大正琴演奏会に出場するというので、他の元同僚と掛け付ける。
 
 中高年の人がステージ一杯、ひな壇に並び5〜60人が一勢に、琴の音をかき鳴らした。これは、圧巻。聴き応えがあり大迫力。正面の前から4番目に座り大勢のばあさんと数人のじいさんの演奏を堪能。
 いよいよ同僚の出番となった。彼女は、まん前の右端に座り、しっかり楽譜を見ながら弾いていた。皆真剣に眼を伏せて演奏しているので、どんな表情か客席に決して見せないのだが、カッケー!!かっこ良かった。

 あるときはスーパーの掃除婦。従業員の便所の便器に付いたうんこを、丁寧にこすり落としている。しかしてあるときは、琴の演奏者。この日のために綺麗に髪を染め、セットしてちかちか光る衣装に身を包んで、ステージに立つ。
 30代半ば過ぎの子供たちが結婚しないので、悩んでいる母親でもある。
 2年前下肢静脈瘤の手術もした。ややびっこを引いて歩くが、それがどうした。

 人生を楽しんどる女性ここにあり!!
 
 やはり、高度なテクニックで観客を興奮させるのは家元と数人の師範で、彼女達は4、50代だ。選りすぐりの精鋭で編成されたグループの演奏は、ダイナミック。まるで、エレキの音。
 「パイプライン」「非常のライセンス」・・・・童謡や演歌だけではない選曲に、しびれた。音を全身に浴びて聴いた。魂に響く。

 ただ、フルコーラスを2曲ずつ弾くのが、31回もあるという長い長い演奏会だったので疲れたーー。

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 帰りに、見に行った元同僚とその会場近くのデパートに寄り、中にある老舗でクリームあんみつを食べた。おいしかった。840円也。高いけれどおいしい。
 彼女を良く見ると、あらら、縫い目の糸が飛び出してほつれたブラウスを着ている。chosu-manmaは、この日をずっと楽しみにして、前からいろいろコーディネイトを考えて、綺麗に装ってばっちりメイクして出かけたのに。
 「お洒落だね」とにこにこして、彼女は誉めてくれたが・・・。

 ここへは、chosu-pampaと7年前の結婚記念日、デイトして食べに来たことがあるの、というと、自分は一度もそんなことをした事がないという。
 聞けば、ご主人は亭主関白。妻がぼろぼろの服のまま、出かけることにも無頓着なのだろう。丈夫で働き者なのだそうだが・・・・。彼は、定年退職後人材派遣の仕事を半月し、自分の田畑で農作業をしているという。お酒が大好きで、昼間から飲むよ、と言う。
 彼女は農家の長男に嫁ぎ、舅姑小姑に仕えてきたという。4人も子をなし、育て上げやれやれと思ったら、今度は舅姑の介護。これもひとりでこなして見送った。
 人の何倍も苦労をしてきたのだが、彼女は謙虚でとても穏やかで、今は孫達に小遣いがやりたいからと、掃除婦をしている。こけしのような髪型で、こけしのように糸のような眼をしている。

 もう、自分の人生を自分のために、生きて良いと思う。彼女の母としての役目は終わった。孫にやるなよ、そんな少ない給料を。月2万円ちょっとだという。

 今度リサイクルショップへ行こうよ、ふたりにちょっぴりの給料が入ったら。とchosu-manmaは言った。中古で安いものでも、良いものを選んでお洒落を工夫すると楽しいよ。