ちょス飯の読書日記

 『死刑囚 永山則夫』★★★★☆

死刑囚 永山則夫

死刑囚 永山則夫

 Eテレで、永山則夫100時間の精神科医との対話を聴き、彼がどんな犯罪を犯したのか、どのような育ちをしたのか興味を持った。まず、佐木隆三の実録小説を読んでみた。震撼とした。事実の持つ重み。殺された人の、悲惨な情況。彼が、獄につながれて初めて、人間らしい暮らしをして本を読み漁り、遂には作家となる。ここまでは、感動物語だが・・・彼は、やはりパラノイアだったのだろう。小説が売れ、名が売れると・・・自分を誇大視するようになっていく。
資本主義体制の中の貧困が、自分を殺人者にした。やがて彼は自分を支援する人を次々に糾弾し、またひとりになってしまう。
永山の母への怒りを、私も覚えるが・・・子どもを見捨てて、野垂れ死にした父こそ母を苦しめた張本人。また、何故これほどの貧困家庭を、もっと行政や近所の人は救いの手を差し伸べられなかったのか、彼が振り払ったのも事実だが、悔やまれる。
軽犯罪で、要観察となったとき何故誰かがそばについていて、更生させられなかったのか。彼は、徹底的に人間不信だったのだろう。折角親切にされても、絶えず裏切られるに違いない、自分の過去を知っているに違いないとその場から逃げ出してしまった。
憧れの武器(拳銃)を手にして、全能感を持ったのだろう。
彼に脳の異常はあったと思う。ひとりを殺しても、たいていの人は恐ろしくてがたがた震えて罪の意識に押しつぶされそうになると思うから。情動を司る部分が貧困と兄による暴力で後天的に欠落したのか、生まれつきの気質異常もあったかもしれない。