ちょス飯の映画評

 『大鹿村騒動記』 ★★★☆☆
 原田 芳雄 一周忌追悼番組が、テレビ放映されたものを録画してあったので、やっと観てみた。

 彼が、歌舞伎を愛して大鹿村の人々と交流があったとは、とても意外。これを作りたかった、そして作り終えて満足して死んだという。天晴れな人生だ。
 彼国では松田 優作が、待っていることだろう。

 画面の彼は、まだまだ元気。死の影はどこにもない。
 
 だが、昨年この映画の公開会場に現れた彼は・・・やせこけて、車椅子に乗り死ぬ寸前という姿。涙をぽろぽろこぼしていた。嬉しい涙だったのだろう。
 これは、不良親父の大酒呑みだった、クールな彼の本来の姿だったのか。
 
 「景清」の舞台を、自分を捨てて男と駆け落ちした女房とまた演じる。女房は脳病で、記憶をなくし、急に暴れたり、泣き叫ぶ。だんだん壊れていくが、時々正気に返る。返ると、罪の意識に苛まれる。

 なかなかの喜劇で、人間の滑稽さ、哀しみも描かれていた。

 三国 連太郎、佐藤 浩市親子が共演していたが、からみはなかった。
三国は、主人公・原田の義父として登場。シベリア抑留時に亡くなった友のために小さな木にお地蔵さんのような、仏像を彫っていた場面が、良かった。
 過疎の村で、村人が総出で役者になり、小道具、大道具のスタッフになり、舞台を回し、観客になりおひねりを投げ込む。これが、何百年も続けられているという。すごいことだ。日本全国にそういう村は、まだまだあるのだ。

 歌舞伎は見たことがない。いつか、私も生で見てみたい。村歌舞伎も、国宝役者の演じるものも・・・もしかしたら、大差ないのかも知れない。

 「景清」の物語を、読んでみたくなった。