ちょス飯の読書日記

 『迷宮』 ★★★☆☆
迷宮 
 これは、恐ろしい話だ。
だが、ストーカーの心理。近親相姦の心理を分析しているように読めた。
「R」という、悪・闇の部分を主人公新見は持つというが・・・これは、誰にでもあてはまること。異常でもない。
 世の中で上手く立ち回る人の「R」は、あまり顕在化しない。しかし、虚無感に苛まれて生きている新見が上司に楯突いて、部下を守っている。
 そして、大変な事件の真相を知る。
 知るが、彼女とともに生きようとする。これは、良い結びだ。前作もそうだった。不安、虚無、死を常に願うふたりが、わかり合い、傷を確認しあい、交わる。ともに生きようとする。

 福島の原発事故後の、情景がところどころで出てくる。
 事故後、原発のことを何も知らず、電気を使っていたものにも責任がある――ということを、主人公は否定する。これは、作者の本音だろう。

 想定外の危機に、なすすべもない人間。

 迷宮入り事件には、実は深い深い秘密がある。真犯人を知っていても警察に通報するとは限らない。

 『掏摸』が秀逸だったので、ちょっとこれは中村としては、凡作と見なして3★とする。