ちょス飯の読書日記
京極夏彦著 『数えずの井戸』 ★★★☆☆
- 作者: 京極夏彦
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2010/01/25
- メディア: ハードカバー
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非常に読みやすいが、紙がもったいないとも思う。
登場するひとりひとりの物語が、一章ずつ二人か三人の会話で語られていく。
数学の証明式のような書き方だ。
『番町皿屋敷』をもとに新説京極版の「番町皿屋敷」を書いたもの。『嗤う伊右衛門』も、怪談を京極氏が、『四谷怪談』を自在に書き直していたが・・・・。この作品は、『嗤う伊右衛門』ほどの凄まじい怨念は描かれていない。小粒だ。
純真無垢で、美しい愚鈍な菊。無欲で自分の美しさにも気ずいていない。けれど彼女は心が満ちていると言う。彼女は、とても賢いが外に見えるのは、不器用で失敗ばかりしている、おどおどとした姿。
ちょっといたいけすぎて、完璧すぎるヒロインだ。
菊に魅力がないので、マイナス1★。
人物紹介の前置き、伏線が長い長い。だんだん、恐ろしい展開に向かっていくが、いよいよの大団円はぷっつりと書かれていない。
事件後のエピローグの形で、事件を見届けた徳次郎が、又市に仔細を語る。
読者は、仄聞で真相を推理しなければならない。
けれど、最後の落ちは鮮やか、鮮やか過ぎる。
まさに、京極節炸裂。
井戸は、埋め立てられるが、菊と三平と静はあの世とやらで静かに暮らしているのだろう。
決して、菊は生前受けた仕打ちを恨んだり呪ったりすることはない。
当主青山主膳と菊の心の交流のはかなさはよくわかったが、恋愛関係となっても良かったのではないか。
「ほめられる」ことのみを、金科玉条に使命としているお側用人柴田・・・・滑稽で浅薄ながら忠義の人。しかし、彼の思惑はすべて悪い方向へ。
ペーソスを感じた。主君のために、お家のために。哀れな母子のために。彼のなしたことが、ことごとく
・・・・。狂言回しが、破滅していく。ちょっと辛すぎる。
故にマイナス1★
家宝、神器と呼ばれる姫谷焼きの十枚揃いの小皿。この一枚が、人命より重いわけはない。