ちょス飯の読書日記
『掏スリ摸』 ★★★★★ ネタバレ注意
- 作者: 中村文則
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2009/10/10
- メディア: 単行本
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ものすごく怖い。背筋が凍る。
スリの仕方の記述がすごく詳しく、見つからないかとハラハラ。自分ももうスリの「僕」になって読んでいる。
スリを生業とする若い主人公が、スーパーで万引きする子どもを見つけて、保安員にこどもが捕まらぬように助けるが・・・。天涯孤独な彼が、子どもとヤク中の母親を殺されたくなければ、三つの仕事をしろと脅迫される・・・
悪人をどう創作するか、巨悪を描ける筆力が作家の力量だという文章を読んだことがある。(確か、中島らもの『酒気帯び車椅子』を書評して誰かが書いていた)
・・・・今まで読んだ本の中に登場する悪者の中で一番怖い木崎。「人を思い通りに動かし、殺すこと」が、唯一の快楽だと言う。
主人公は、スリの仕事が好きで無意識のうちにもスリをはたらいている。いつ死んでも良いと思っていた。しかし、理不尽な目に遭わされて、もう一巻の終わりというところで「生きたい」と願う。主人公の「僕」はこどものころから遠いところに塔が見える。塔は恐らく彼の作り出した彼の神なのではないか?彼を導き、見守っている。