ちょス飯の読書日記
『山本周五郎全集 第8巻』 季節のない街 ★★★★☆
- 作者: 山本周五郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1963
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六ちゃんが、自分の想像上の市電を点検から始めて終電まで、自宅から「街」まで運転する。「制帽」まで被るが、手袋以外はすべて彼の眼にしかみえない。そして、どですかでんとあたかも市電の走る音のように、地声で効果音を出しつつ走るのだ。これは、すごい。彼は白痴なのか、いや、賢いのか。
六ちゃんは、おそっさまに「母ちゃんの頭がよくなりますように」と毎晩唱える。てんぷら屋の母ちゃんは、一心に六ちゃんの頭が良くなるようにと信仰しているのだが。
そのほか、貧民窟=街の住民面々の凄まじくも滑稽な貧乏暮らしが綴られている。どの話も可笑しく、悲しい。
とくに、憂国塾の先生、顔面神経痛の島さん、乞食の親子の話が可笑しい。そして切ない。