ちょス飯の読書日記

 『路上のX』   ★★★★☆

路上のX

路上のX

  ネタバレ注意!
 桐野得意の、社会問題の根底にある女性差別を糾弾している小説。
 渋谷に集まる家出少女の実態。何故家に居場所がないのか。あるふつうの家庭に育った真由16歳と10代で妊娠して結婚したヤンキーママの娘リオナ17歳、ナオミの幼馴染でやはり貧困の母子家庭で育ち、妊娠した後に彼氏に捨てられたミトが、助け合って暮らそうとするが、・・・。
 未成年者が家を借りることはできない。泊まるところもなく家出してきた少女を親切に泊めてくれる人もいるだろうが、たいていはセックスを代償とされる。それでもいいから、家の中で寝たいと思う少女達。
 JKビジネスで雇われ、裏オプションもやり、その金でなんとか暮らそうとするが。腹ペコで風呂にも入れない姿が描かれているので、胸が詰まった。

 何故、彼女たちは家に家にいられないのか。あまりにもその理由は残酷だ。とくにリオナの義父による性的虐待の場面。実際に、このようなことがこの日本社会の中で起きているということに、愕然とする。どうやってこの娘らを助けたらよいのだろうか。決して彼女らは、行政に頼ろうとしない。情報がないのか、施設に収容される不自由さばかりを嫌うのだ。
 親による性的虐待は被害者自身が申告しなければ明るみに出ない。まして、母親が被害を受けている娘を助けず、逆に嫉妬したりすることもあるあとは。義理の娘を犯すことに、母親の夫は微塵も悪いことだと思わない。嫌がる素振りをして、喜んでいるのだろうとまで、のたこく。どんなに、心身を傷つけられたことだろうか。リオナは中学生で、逃げることがきなかったのだ。

 金と力でいたいけな少女を買い、辱めて喜ぶ男性達。変態の東大生がリオナを住まわせてプレイをさせていた。が、その部屋に転がり込んだ真由とミトが、彼をひどい目にあわす場面は、溜飲が下がった。

 一方、男性としてごく普通に女性と出会い、恋愛して結婚するということができないひとが増えていることも、JKビジネスの需要となっていることだろう。成人の娼婦より、若ければ若いほど価値が高いという、男の勝手な言い分。女と対等に愛し合い、性の交歓を一生体験できない野郎の価値観だろう。

 真由の両親の突然の失踪の、理由が最後に明かされるが、・・・。これはちょっと取って付けた感が否めない。故にマイナス1。
 真由があまりの衝撃に耐えきれず、やはり少女たちだけが、自分を受け入れてくれる場所だというが、・・・。

 桐野氏はいつも虐げられた女性への応援歌として、小説を描いているように思う。そして、女はレイプされたことでどんなに心身が深く傷つくかを語るのだが、同じ体験をしてもたくましく生きている女性に、やはり励まされていくのだという結論だった。真由は、レイプされたことを警察に訴え出てして、仕返しもやってのけた。