ちょス飯の読書日記
『天湖』 ★★★★☆
- 作者: 石牟礼道子
- 出版社/メーカー: 毎日新聞社
- 発売日: 1997/11/01
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (3件) を見る
孫息子は、祖父の遺言を守り彼の故郷に、遺灰を撒くために新盆に帰ってくる。今は湖となった村。そこには、移転した村人たちが集まって来ていた。
日本中にダムができたことで、飲水や水力発電、防災のために役立っているのは確かだが、人はダムができるときに、立ち退くのだが、鳥や獣は水が入れられたときにい、高いところへ逃げていったかもしれぬが、虫やみみず、小さな生き物たちは溺れて死んでいったことだろう。おけらは必死に前足を掻いて泳いだのかもしれない。
都会の人々を養うために、辺境の地は犠牲になる。しかし、都会の暮らしはそれほど幸せではなく、爺さんは発狂してしまう。しかし、彼は村の暮らしをいつも思い出していた。
その箇所では胸が痛んだ。村から退去することが決まって、桜の大木を切り倒すときには、血しぶきが飛んだという。
さゆりという、唖の巫女が湖から死体で引き上げられ、その真相が最後に語られるが、辺境の村に住む人々の暮らしの豊かな文化、食文化に驚かされた。捨て子だったさゆりを育てたのも、また捨て子だった愛子さんで、彼女は爺さんの母親に育てられている。彼女らには、不思議な力靈性があった。
主人公の征彦が、祖父の形見として持参したこの村の桑の木で作った琵琶には、その葉を食べて育った蚕の糸が弦として張られている。
おひなとお桃という、母娘の歌う声に魅せられ、征彦は琵琶の曲を作ろうとするが、完成するまでは書かれていなかったので、1マイナス。