ちょス飯の映画評

 『タクシードライバー』 

 ★★★★☆
 若き日のマーティン・スコセッシ監督の映画。ロバート・デ・ニーロジョディ・フォスターも若い若い。

 不気味で物悲しいよる眠れない男が、タクシー運転手となってニューヨークの危険地帯を移動する。

 映画の中では時代背景は一切語られないが、どうもベトナム戦争後の不景気な街のようだ。

 ロバート演じるトラビスは、大統領候補の事務所で働く女性に一目惚れして口説くのだが、彼女に一緒に映画に行こうと誘って、ポルノ映画館に入るところはおかしかった。

 トラビスは精神に変調をきたしている。薄汚い街の住民をゴミだと感じて皆、水洗便所のうんこのように一気に流れ去ってほしいと思う。

 彼女に冷たくされて、トラビスはコツコツ貯めたお金を銃に替えて、・・・・。体を鍛え、世の中を拳銃の力で正しくしようと考え始めたのか。・・・敵を射つ練習や素早く銃を出す器具を作ったり、ナイフをブーツに装着したりし始める。

 一人ぼっちで、友人も恋人もいない。ただ、彼は日記を書いている。両親には偽りの幸せな暮らしぶりを手紙に書いている。彼は、いい子として育ったのだろう。

 そして、テレビドラマの中でで不倫をしている女性のセリフを聞き、蹴っ飛ばして意を決する。

 正しいこと清潔なことが好きな彼。

 12歳半だという家出少女アイリス(ジョデイ・フォスター)を見かけて、ショックを受ける。
 彼女に売春させている男、売春宿の部屋代を取るために見張っている老人。大変なシチュエーションだが、ふたりは滑稽にからりと描かれているので、そこに驚いた。しかし、これがリアルなのかもしれない。彼らには罪悪感がまるで無いのだ。
 また、当の少女は、売春を無理強いさせられているのではなく、家はつまらないから家出した。帰りたくないという。

 日本なら少女のことを、だまされて薬を打たれて無理やり客を取らされているという描き方をするだろう。

 そして、意外な展開のラスト。

 タクシー運転手の先輩が「俺達は敗者なんだから。」と言ったセリフが気になった。ベトナム戦争に負けたことと、彼が17年間働き続けて自分の車一台も、持てないこと。どちらも表しているのではないか。
 行き場のない怒りが女衒と見張りのじいさんに炸裂したが、観客はトラビスが自殺しようとしていたことを知っている。

 眠れない人々の街。トラビスの狂気が、無差別殺人に至らなくてほっとした。暴力をスコセッシ監督は、よく描く。

 観客がどう感じるか、それは自由だ。と監督は説明しない映画。胸が痛くなる。だからマイナスいちほし。