ちょス飯の映画評

 『母べえ』   ★★★★☆

母べえ 通常版 [DVD]

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 以前、吉永小百合さんが、「結婚しても自分は子どもを持たないことにした。もし仕事を市に行くときに、こどもが病気になったら置いていかねばならないから、心配で仕事に身が入らなくなるから。」と語っていたが、彼女はこの映画のなかで、真の母親より母親らしく母べえ演じていた。
 治安維持法により、自由な表現を禁止され「国策に背く」としていきなり大学教授の父べえ (坂東三津五郎)は逮捕されてしまう。
 2人の娘を養うために母べえは、必死に働いて守り抜くのだが・・・。

 父の愛弟子だった男が、母べえを助けにやってくる。彼は、先生の奥さんとこども達を守りたい一心で甲斐甲斐しく尽くすのだった。が、美しき母べえに恋心を抱き始める・・・。

 先生の弟子・やまちゃんの先生の奥様に対する、美しい純愛ドラマでもある。
 これは浅野忠信が演じていた。コミカルな役でもあり、こんな顔も彼はできるのかと驚かされた。他に、本音を言ってはばからない、無神経なおじさんとして、鶴瓶。彼が寅さんのように、物語の中の緊張を和らげている。

 母べえが戦後どのように、ふたりの子を育て上げたかはラストでわかる。立派な職業についた娘達。
 
 もう少しだけ、やまちゃんの母べえに対する愛情、あるいは苦悶する場面もほしかった。故にマイナス1★。
 10年前の作品だが、果たしてこれからの日本も、為政者に反対する者たちが治安を害するものとみなされて、いきなり逮捕されたりしないだろうか。不安だ。