ちょス飯の映画評

 天のしずく  ★★★★★
 

 何度も涙がこぼれる場面があった。

 辰巳 芳子の人生と料理、宇宙観そして生命への畏敬が表現されている。

 とくに、日本中の土をただ、四角の和紙に四角く広げて並べた美術家との対話の場面では、宇宙の慈しみが「土」である。これを触れるということの素晴らしさを語っている。

 ハンセン病を完治しても、長島療養所に住み続けている元患者の女性が、辰巳の「命のスープ」を死の迫った友人に作って飲ませることが出来たというエピソードも素晴らしかった。その女性は、病気のために指が欠けており、グーで二つの手を合わせて、料理を作っておられた。

 植物、動物の命をもらって生きている私達。しかし、その命を育むのは、実に土なのだ。

 土から生まれたものを喰らい、排泄し、そして私たちはまた土に還る。

 また、辰巳の母上のお言葉「愛は人の中に在るのではない。人と人の間に在るのだ」には、感銘を受けた。お父上より、少しでも長生きして彼を看病したいと願ったのに、彼女の方が3年も先に亡くなったのだという。

 脳梗塞で寝たきりになってしまった愛夫を残して。

 しかし、娘である辰巳は、母は先にあちらへ行って父に、死は恐ろしいものではない、「わたくしが待っているところ」と伝えたのだろうという。

 涙。

 食の大切さ。日本の食料自給率を憂い、米と大豆を交代で作る実験や子供達に大豆を育てさせる運動も、素晴らしいことだ。
 彼女がていねいにていねいに作る料理を通じて、日本を良くしていきたいという実践を知った。

 おせち料理を作る場面で、焼き豆腐の煮しめが紹介された。田つくりを作った鍋で、そのだしを利用するとは、驚いた。
 これは作ったことがなかったが、早速作ってみると非常に美味しかった。