ちょズ飯の読書日記

 『64』

64

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★★★☆☆

 角川映画が全盛の頃、観てから読むか、読んでから観るかという宣伝文句を言っていた。逆かもしれない。

 これは、テレビドラマと映画を観てから読んでみた原作だ。長過ぎて登場人物も多すぎ。誰が誰だったか最後まで、三上の家族と雨宮、目先くらいしか覚えられなかった。

 テレビドラマ、映画、原作の順番に評価したい。三上役のピエール瀧さんに、軍配を上げたい。

 醜形恐怖で悩む、娘さんが両親を憎み「死にたい」と暴れる場面は本当に、恐ろしく哀しかった。一時的に、とくに思春期、誰もが自分の容姿を憎み、悩み苦しむことはある。

 自殺してしまう人もいるだろう。娘が家出してずっと行方が分からないD県警の広報で働く元刑事の苦悩と、それを夫婦で乗り越えるのが、テーマだ。

 そして、昭和64年に起きたしょうこちゃん誘拐殺人事件が時効を迎えようとする平成14年、まったく同様の誘拐事件が発生する。・・・

 広報とマスコミの対立、在り方や警務部と刑事部の対立。県警トップが東京のキャリア官僚に挿げ替えられるからくり、など素人の市民が知らぬことばかりが描かれていた。

 筆者は新聞記者から作家になったからか、臨場感があふれている。それぞれの登場人物が、いそうな人ばかりだった。

 しかし、長過ぎる点と難しい漢字が多用され非情に分かりにくい文章である点、登場人物が多すぎる点をマイナス2★とする。