ちょス飯の読書日記

 『サラバ!』 ★★★☆☆

サラバ! (上)

サラバ! (上)

サラバ! (下)

サラバ! (下)

 面白くて一気に読んでしまった。しかしおとぎ話のようで、姉がわやくちゃな原因が、やや現実離れしている。

 小説は、現実をデフォルメしたり作家が作り上げた世界なのだからそれで構わないのかもしれないが・・・。

 主人公僕の家族の歴史、精神の発達史だが、それぞれの人々の葛藤の歴史でもある。ヲコウモンサマはおかしかったが、・・・

 弁天様の刺青のある「おばちゃん」という、大物が何故僕一家とそんなに親しいのか。ご近所と言うだけでこれほど、他人を愛して気遣ってくれるひとがいるなんて。

 僕がこどもの頃過ごしたカイロで、親友になったヤコブは本当に素晴らしい少年だった。20数年たっても、大人になっただけで、素晴らしさがより増している。

 そういうひとは、いるのだ。仲間はずれでもよい、少数派でもいい。自分の信じるものを見つけて持って生きる人はいるのだ。
 そして、他の人の信じるものも認めることができる。それを、許す。馬鹿にしない。共に生きようとする。
 
 ヤコブと主人公が再会する場面は、涙涙だった。

 わたくしも、いつかチュニジアへ行き友人家族に会うのだ。
 
 わたくしが現状に満足して、楽しいのは「信じるもの」があるからか。そして、辛い時には、もうひとつのどこでもドアのような、小説の世界を知っているからか。

 劇中劇の仕掛けは、どうかな。故に、マイナス2★。

 信じるとは、何か。
 事象を信じることと存在を信じることでは英語は分けて言うが。
 
 受容するということだろうか。そして、人との出会い、時間が人を変化させる。良くも悪くも。
 小物の主人公は、ごく平凡な男だ。ただ、容姿が美しいだけの。
 
 だから、ごく普通の家族の普遍的な物語だとも言える。