七七日忌 水木しげる先生を思う 

『私はゲゲゲ』『水木しげる伝 上中下』を読み返した。
水木先生は、実に健康で100歳以上行き続けるだろうと思っていたので、昨年末の訃報には非常に驚いた。
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 彼の作品の中では『ゲゲゲの鬼太郎』が一番有名で稼ぎ頭だっただろうが、彼自身の自伝があまりにも面白い。氏は、奇妙な人・変人を好んだが、彼こそ本当に高貴な魂の人で、妖怪から好かれた偉大な「稀」な人だった。

 とにかく、ご自分の下品で滑稽な姿をよく描く。鼻くそをほじっていたり屁をしたり排便している場面が出てくる。横になって寝転んでいたり・・・。

 お金持ちで、気品があり、医学博士でもある手塚治虫先生と、全く対極にある漫画家だった。
 
 戦地での苛烈な体験も、密林の中で「塗り壁」が氏を断崖絶壁から墜落するのを防ぎ、左手は失ったが、無事に帰国させてくれたおかげで、わたくしたちは、ある戦場の姿をありありと見ることが出来た。
 南洋の島国に住む人々の、幸せな暮らしぶりも。

 片腕一本で、妻子きょうだいを養い、勲章までもらって彼は逝った。あの世を見てみたいと常々氏は思っていた。

 今頃は、三途の川を渡りきり、ドーナツのなる樹の下におられるだろうか。
 腹いっぱい食べて、眠りたいだけ眠っておられることだろう。ただ、彼の頼りの、航空母艦であるおかあちゃんはまだご存命だから、王道楽土へ先に来てしまって、寂しいかもしれない。

 布枝夫人ありての、幸せな結婚生活だった。幸多き人生だったね。良かったね、水木しげる先生。