ちょス飯の読書日記

 『石垣りん詩集』  ★★★☆☆

石垣りん詩集 (岩波文庫)

石垣りん詩集 (岩波文庫)

 国語の教科書で読んだ、「私の前にある鍋とお釜と燃える火と」を書いた石垣りんの代表的な詩を、詩人伊藤比呂美が編集した。

 とても力強い、現実を見つめた絶望や、怒り、喜び、誇りが表現されている。

 それにしても、女ひとりが銀行員として一生働いたなら、充分余裕のある暮らしができただろうに。

 彼女ただ一人が、病弱な父や義母、働けない弟達のために月給を運んだという。ぼろ家に住み、和式トイレのきんかくしを洗いながら・・・。

 本当に糞尿の染み込んだ部屋で、臭気に耐えながら、詩作が続けられたのだろうか。

 詩では身を立てられないというが、それにしても有名な友人知人から称賛されてきた詩人なのに。

 自分の乳房の表現は、男と結ばれなかったことへの恨みなのか、諦めなのだろうか。または、自分を笑っているのか。独身女の哀愁を感じた。

 茨木のりこ氏が、とても上品な作風であると思えてきた。