ちょス飯の読書日記

 『教団X』 ★★★★☆    
  

教団X

教団X

 これは!!
 書き過ぎでしょう。私達人間の心、神と悪魔、戦争の真の姿・・・性交の歓びと死、・・・アフリカの作られた飢餓、作られる内戦。テロリズムの背後にある利権・・・。サディズムの悪魔的カリスマ沢渡(教団Xの教祖)とお茶目な善なるおじいちゃん求道者松尾の対決という形で、・・・。あらゆるテーマを一冊のなかに描いてしまった。
 
 この後何か、書くものあるの?

 いつも、悪と暴力の発作的メカニズムを追及してきた中村。ひとつひとつの物語を生きるわたしたちに優劣はない。人が人を殺すことは許されない。とは、単純で偉大なる結論だ。

 漫画『イティーハーサ』にも通じる。
 
 宇宙の始まりから、現在に至るわたしたち人類の叡智の到達点も分かりやすく、おどけじいさんの言葉で示されている。先の戦争に対する総活も。

 印象的だったのは、戦争に勝ったらどうなるか、負けたらどうなるのか。庶民にはたいした変わりがないではないか、という描写だ。
 また、死んでいった特攻隊員のことを、金儲けに利用するやからは許せないというセリフ。
 これは、政治家必見の書。是非、若者に読んでもらいたい。

 ひとつだけ難点は、性の奉仕者の女達。男に都合が良すぎる。