母孝行

 鬼婆と化した母に会いに行く。

 母のお見舞いに行く、と言えば「(お前の)金がかかるからくるな」という。
たから、今回は夫婦で用事で行くのだ、と言って母の住むアパートに2泊した。夫は彼の実家に泊まった。

 最安値のバスで行きたいが、パートを3連続で休んでは申し訳ないので、初日は仕事後に出て、2泊3日の行程。
 バスでは、滞在時間が短くなってしまうので、思い切って新幹線に乗った。

 母は、「こんな狭い借家に、あほ嫁のせいで追い出された」と1時間に10回は繰り返し、「あんなやつ」死ねばいいのに、などと悪態をつくのだった。

 他人にもそういっているのか、と尋ねると誰にも言わないという。なら、娘にも、言わないでほしい・・・。まして、母が兄嫁と一戦交えては、危険だと察知した弟が、クレジットカードを持てない情況なので、あちこちに断られた挙句奔走してやっと借りられたところなのに、毎日同じ言葉を、弟に繰り返しているらしい。

 母を怒らせたくないので聞こえぬふりをするしかない。
 あまりにも身勝手で、過去の忌々しい記憶をずっと繰り返して、言い続けている。あまりに醜い、老獪な姿。

 その妖怪変化が、哀れでならない。

 そのアパートは、広々としており、隣の騒音も皆無。上下二階建てを借りるメゾネットタイプで、賃貸料も非常に安い。バス停も近いし・・・。

 住み始めて半年。住めば都。野宿や、ぼろぼろのアパートに住む人だって少なくないぞ。