ちょス飯の読書日記

 『瓜子姫の艶文』 ★★★★★
  

瓜子姫の艶文

瓜子姫の艶文

 
 これが、『眠る魚』と同じ頃に書かれた、著者の最期の江戸時代の遊女もの。2013年式年遷宮にちなんでなのか、主人公伽羅(キャラ)は伊勢神宮に近い街道沿いにある、松阪の遊郭に暮らしている。
 お札が降ったと、お伊勢参り「お蔭参り」に熱狂して、各地から押し寄せる人々の姿が背景になっている。

 

 遊女伽羅丸が、木綿問屋稲葉屋の旦那に出した恋文(艶文)を、その御内儀りくが盗み読むところから物語が始まる。

 しょっぱなから度肝を抜かれた。

 「あなたとのあれが最高に良かった」と。そして、懐紙を自分の股に挟んで、陰水を染み込ませ、陰毛を一本入れて折って恋文に添付してあった。と書かれているから。

 ずこーーん!!と抜けている書きぶり。何も、怖いものはない。「文句あるか」という眞砂子様節。
 陰水と陰毛入りの遊女の恋文のことは、何かの資料にあったのだろうか。

 物語は、幼い頃母親とはぐれて、どこからか流れ着き、孤児となった伽羅の、記憶を辿る形となっているが、正妻の座を手に入れ、晴れて表の妻となってからの、彼女の虚しさが横糸として、母が聞かせてくれた「瓜子姫」のお話が縦糸となっている。

 めくるめく性愛を歓喜できたのは、ほんの一瞬であった。
 永遠の愛など無い。というのが、テーマなのか。

 瓜子姫の話の最後が、東北の方だと悲惨なものだという。ハッピーエンドの伝承の地方もあるが、・・・。

 男に翻弄されても、決して負けない女。
 眞砂子様は、一貫して強い女を礼賛していたのだ。